時は明治二十年。旧大名家の家系である春衡(はるひら)伯爵家に仕える、国許(くにもと)の下級武士の娘――静(しず)。彼女は行儀見習いの為に春衡伯爵家の次男――芳朝(よしとも)付きのメイドと成る。身分違いの想いを寄せながら、二年。芳朝が大学を卒業した或る日、到頭(とうとう)――縁談の話が持ち上がる。明治時代の華族、春衡伯爵家。33ページ詳細