NTT西日本の「企業理念」策定と人材育成を担い、やがて代表取締役副社長となった著者は、東日本大震災など多くの災害で現場を踏み、対策を指揮した、稀有なリーダーでもある。その圧倒的体験から生まれたキャリア論・災害論!書名の邂逅(かいこう)とは、自分に影響を与えた特別な出会いを指す。人とのご縁や災害との遭遇を邂逅という視点からとらえることで、著者個人のさまざまな経験が、ひと連なりの出来事として読者にぐんぐん開かれていく。とりわけ本書が大きな紙幅を割くのは、災害対策である。東日本大震災の際、ほぼすべての家屋が倒壊する中、NTT局舎だけが残った地域がある。日本の通信インフラの担い手としてNTTには特段の備えが求められていたからだ。そうしたNTTグループで台風・地震など幾多の災害対策・対応の先頭に立ってきた著者の語りは、今まで知られてこなかった貴重なドキュメントであり、今後の対策への重要な示唆ともなっている。キャリアと災害――この日本列島で生きていく人たちのリアルな日常の問題――について、新たな視座を得る手がかりがここにある。 [目次] 巻頭言はじめに――邂逅とは?第1章 人との縁に学ぶ1-1 人とのご縁と成長――「~である私」という物語1-2 不思議なご縁からの学び 稲川素子氏――父がくれたご縁 武田双雲氏――TV番組がくれたご縁 矢野和男氏――開発意欲がくれたご縁 五百籏頭眞氏――財界セミナーがくれたご縁 松岡正剛氏――研修がくれたご縁1-3 ICTによる「邂逅連鎖」の実現――コミュニケーションの未来形(1)危機意識から生まれた「T-MAP」(2)時空を超えた「人―人通信」(3)「人―モノ通信」の広がり――「人―モノ」から「人―街」へ第2章 災害との遭遇に学ぶ2-1 キャリアと災害2-2 キャリアに基づく災害論2-2-1 災害をとらえる視点――予測できる災害と予測できない災害2-2-2 予測できる自然災害:台風・豪雨(1)長崎大水害(1982年7月)(2)九州北部豪雨(2012年7月・2017年7月)(3)台風19号:ミレーレ(1991年9月)チームメイトの証言①(4)奄美豪雨(2010年10月)(5)台風21号(2017年10月)(6)熊本豪雨(人吉豪雨) (2020年7月)2-2-3 予測できない自然災害:地震(1)阪神・淡路大震災(1995年1月)チームメイトの証言②(2)東日本大震災(2011年3月)チームメイトの証言③2-2-4 その他の自然災害(1)雲仙・普賢岳噴火による火砕流(1991年6月)チームメイトの証言④2-2-5 まとめ:災害を生き抜くための目安表第3章 邂逅連鎖を未来へつなぐ3-1 過去の邂逅を未来へつなぐ3-2 シミュレーションとシナリオ作成3-2-1 基本的な考え方3-2-2 シナリオ作成付録 災害とパンデミック災害・パンデミックと幸福度との関係パンデミック対策の「もし」を考える 小説 新型コロナウイルス参考文献おわりに――再び邂逅とは?