ビアンカの手に、少女の死霊は自分の手を重ねた。冷ややかな手だ。死者たちはアドリアン神父を怖がる。自分が断罪されるかもしれないと思うのだろう。でも、この子はわたしを助けてくれた、この子の願いを叶えたい。ビアンカは悲しい目をしたその少女と、ある約束を交わす。マンネンロウと呼ばれる花が欲しいのだという。マンネンロウは死者が好む花だが……。
悲しき死者の魂の訴えを聞く『聴罪師アドリアン』シリーズ、第8弾。電子オリジナルとなる短編集。
*夏の終わりに
*海の薔薇(ロスマリン)
*幼い祈り
*カンタリス
*荒れ野の果て――外伝・ヴェネデット青年期
●吉田縁(よしだ・ゆかり)
名古屋市在住、みずがめ座、O型。1995年下期のコバルトノベル大賞佳作を受賞しデビュー。主に、西洋中世をモデルとした架空ファンタジーを執筆。代表作は『聴罪師アドリアン』シリーズ。趣味は手芸、多肉植物。