ロンドンに朝が来なくなって、八年と三ヶ月。ジェームズは本業の学生を務めながら、文字通り夜な夜な副業をこなす。それは、“死神”として人々の寿命を狩り、世界の“寿命平衡”を保つこと。だが彼は、その性格と過去のトラウマから、人を殺すことができないでいた。 ある日、ジェームズは銀髪のシスターが男の胸にナイフを刺し、寿命を回復させている現場を目撃する。彼女の名は、メアリー・ストランド。同じ学校の生徒であり、永久の時を生きる不死の“聖女”。ジェームズの妹が不治の病であると知ったメアリーは、ある提案をする。『あなたの妹・マーガレットの寿命を伸ばす代わりに、私を殺してちょうだい』 人を殺せない死神と、死ねない聖女は、命をかけた契約を結ぶ――。
