私<杏>は大学からの帰り道で不慮の交通事故に遭い記憶喪失になった。病院で目覚めた時、傍らにいたのは夫だという<希一>。そもそも私は20歳で学生だというのになぜ結婚していたのか?日常にちらばったこれまでの自分の断片を探しながら、彼・そして私はどのような暮らしをしていたのかを確かめる内、自分の体には明らかに事故の傷とは違う、胸に大きな百合の花に似た『痣』があることに気づく。記憶が早く戻るように願う私を、彼は感情的にたしなめる。行動は制限され、事故から目覚める前に見た、自らの過去の記憶のような…あの忌まわしい光景…。その記憶と何がこの痣に隠されているのか?それらを巡って故郷の因習が彼女を逃さない…
