原爆が落とされるかもしれなかった、小倉、新潟、横浜、京都。この史実は、どのようにして発掘され、受け止められ、継承されてきたか。日米双方の史資料にもとづく空襲記録運動や自治体史編纂、あるいは環境運動、文学・映画等も含め、足元の郷土を知ることから原爆への想像力は始まった。47都道府県の被団協に注目し、広島・長崎以外の被爆問題も考える。戦後世代は、どうすれば戦争に当事者意識を持てるのか。投下候補地からヒントを探る。
はじめに―原爆投下候補地の戦後史
第1章 被爆地以外に残る被爆の痕跡
1 各地に散った被爆者たち
2 落とされなかった原爆の記憶
第2章 長崎への贖罪意識―小倉
1 命運を分けた曇天
2 小倉の原水禁運動
3 カネミ油症、風船爆弾、そして原爆
4 並存する二つの平和資料館
第3章 原爆疎開の伝承―新潟
1 落とされなかった原爆
2 新潟版「火垂るの墓」
3 自治体史の編纂と知事布告資料の発掘
4 新潟の被爆者たちと非核平和都市宣言
第4章 大空襲の記録から原爆の記録へ―横浜
1 予約解除された横浜
2 空襲記録運動の展開と横浜
3 横浜市立大学による米軍資料の発掘
4 横浜とヒロシマ・ナガサキ
第5章 無空襲都市からの想像力―京都
1 「無空襲都市」「非戦災都市」の誕生
2 オーテス・ケーリと京都神話
3 空襲記録運動と吉田守男
4 再生産される古都神話
終章 実証的な想像力の構築へ向けて
