弱さに向きあい、弱さに学ぶ育児や介護から医療や福祉まで、少子高齢化を背景に広がるケアの議論。非対称な関係のなかで信頼を構築する方法とは? 誰もが責任を担い誰もが依存できる社会とは? 現場のリアルを最重要の論点で整理した入門書。◎目次はじめにⅠ部 人間の根源としてのケア──ケアの基本11章 ケアとは何か(宮坂道夫)2章 弱さへの応答(西村ユミ)3章 トータル・ケア(榊原哲也)4章 自己決定と自立(熊谷晋一郎)Ⅱ部 共存の場としてのケア──ケアの基本25章 身体との接触(伊藤亜紗)6章 日常と場(三井さよ)7章 孤立と気づき(村上靖彦)8章 ケアの倫理とケアリング・デモクラシー(冨岡薫・相馬直子)9章 共感の代償(武井麻子)10章 当事者の連帯とピアサポート(永森志織)TALK BACK 私は「ケア」が苦手です(油田優衣)Ⅲ部 多様な人々と創造するケア──ケアの実践・研究111章 子どもの生きづらさからケアを考える(大塚類)12章 インクルーシブ保育を実践する(東村知子)13章 共に在る場所をつくる(山田あすか)14章 患者の選択から距離をとる(田口陽子)15章 高齢者の未来をひらく(井口高志)Ⅳ部 社会を変革するケア──ケアの実践・研究216章 料理から社会を問う(阿古真理)17章 弱者の物語をひも解く(小川公代)18章 ケアから市民像を再考する(池田弘乃)19章 ケアと自然・コミュニティをつなぐ(広井良典)参照文献一覧人名索引/事項索引◎はじめにより 子どもや高齢者、障害者など、一部の人々だけがケアを必要としているとみなされがちだが、実際は、すべての人びとが膨大な人やモノからケアを受け取っている。ケアなしに生きていくことはできないのだ。そこから、ケアは相互に依存しあうことで成り立っているこの社会の前提条件であることが見えてくる。したがってケアは、万人が等しくそれを担う責任とそれを受け取る権利を分けもつべきものである。 しかし現実には、一部の人にケアの責任が集中したり、一部の人が十分なケアを受け取れていなかったりする状況がある。介護や育児などのケアを誰が担うかという課題や、生きづらい思いをしている人たち、病いや障害をもった人びと、多様な状態にある人びととの共生という課題が顕在化するのはそれゆえである。 ケアが万人に等しく担われ、また受け取られる権利となる基盤をつくるには、ケアの偏在やケアする者/される者という二元論にもとづいたケア観を、別様に転換する必要がある。いわばケアのパラダイムチェンジである。それには、ケアを根本から問いなおす議論が必要になるだろう。
